先日、資料作成の必要性から、ちょうど10年前(平成11年)の労務単価を改めて目にする機会がありました。
この労務単価は、普通作業員や大工,一般運転手など、公共工事の積算に使用される単価で、その職務内容に応じて細分化されており、51種類に分かれています。
この労務単価の他に、歩掛かりといって、例えば幅300・深さ300の落蓋式側溝を100m施工するのに、どのような労務や機械そして材料が発生するのか、その作業条件によっての数量が定められています。
こうして積み上げられた本工事に関わる「直接工事費」に、仮設や安全、各種調査に関する費用の「共通仮設費」や、法定福利等の「現場管理費」、会社本体の経費としての「一般管理費」が加えられて工事価格が決定されます。
かなりおおざっぱに書いているので、イメージとして分かり辛いかもしれませんが、要は各種調査結果に則って、工事を実施するのに必要とされる工事価格が積上げられているということです。
話を戻しますが、それでは例えば普通作業員の単価は、ここ10年間でどう変わったでしょうか。
普通作業員の単価(岩手県)を見てみると、21,600円/日(平成11年度) が、12,700円/日(平成20年度)に下がっていて、下落率は58.8%になります。
そして、この労務単価の下落は、ここ10年間毎年続いています。
例えば花巻の中心的な工事である下水道工事に、平成11年度と平成20年度の労務単価を入れて比べてみると、労務単価の違いだけで、工事費が20%以上も安くなっていました。
材料に関しても各種メーカーの厳しい競争環境の下で、設計価格にも反映されている通りの値下げ傾向ですので、実際のコスト縮減は更に大きいように感じます。
ここ10年間で、労務単価の40%以上の下落と、工事費換算でも、コスト縮減率が20%以上という積算の結果。
もちろん工事の種類によって数字を一概には言えませんが、労務単価の減少分だけを考えても、かなりのコスト縮減=会社や材料メーカーの利益の減少と考えると、愕然とするものがあります。
この利益減少分は、給料の低下や各種経費の削減等で補ってきているのですが、給料を下げるから設計労務単価も下がるという、マイナスのスパイラルに落ち込んでしまっているのが、今の建設業の現状です。
この現状を裏付ける数字として、平成19年度の建設産業(岩手県)における経常利益率は -2%を越えており、急激な環境変化に対応しきれず、赤字の会社が多くなっている現実が伺い知れます。
更に追い打ちを掛けるように、技能工の高齢化が進み、雇用を控えるが故に若手への技術の継承が進まず、設備投資も抑えている中で機械・車両等の老朽化や減少が進み、会社としての体力が益々なくなってきています。
こうした建設産業の現状を考えたとき、今のままで良いはずがありません。
地域の皆さんの生活を便利に安全にするインフラ整備や、建物の耐震化、道路や橋梁等の長寿命化にするための維持管理。そして、除雪や災害、破損への対応等、多くの社会的な責任を果たさなくてはならない建設産業。
オバマ大統領がいうチェンジが求められている中で、光明を見いだす糸口が必要です。技術力を継承させながら、地域社会に対してきちんと役割を果たせるような人財と設備を有し続けていくためにも、業態の幅を拡げていくことが不可欠と考えています。
給料や社会保障を含め、社員の皆さんの生活を安定させ、地域社会に貢献し続ける企業であり続けるために。
この地域における モノ・人という資源に目を向けて、業種をも越えた連携・協働に活路を見いだし、こうした地方における一つのモデルケースを構築していく事が今の目標です。
厳しい道と分かっていても、一歩を踏み出す勇気を持って。
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